ニライカナイ 〜川井豊子の詩の記憶の森

ニライカナイ 〜川井豊子の詩の記憶の森
汗ばむ

こんな真夏の夜は

過ぎ去ったはずの 日々を思い出させます

焦げつくほどの光の過剰が

大地にだいだい色の火照りを残し

黒い布を無造作にひるがえす

夜さえそれを包み込むことができずに

じっとりと汗ばんでいる

かすかな風さえ汗ばんでいる

こんなうっとうしい真夏の夜は

あれらの日々の

砕けた欠片の一つ一つを思い出させます

時が清潔な洗濯物のように

日々たたみ重ねられたところで

見えない傷をすぐには癒していかないものだとむしどの

物知り顔な虫どもの破れ声が

野に短く うそぶいている

こんな夜には

日々の静けささえも

うっすらと汗ばんでゆくようです

 

 

 

| 既刊詩集『水車のめぐる家で』 | 14:24 | - | trackbacks(0)