ニライカナイ 〜川井豊子の詩の記憶の森

ニライカナイ 〜川井豊子の詩の記憶の森
水車

古い絵のなかの

外輪船にも似て

庭越しに小さな水車のめぐる家で

同じようにその音に充たされながら

あなたは聴いていた

ゴボゴボと水くぐる 低い水泡の音

わたしは聴いていた

ザッパ ザッパと跳ね上がる 高いしぶきの音

それはたぶん

あなたのほうが水をあいしたせいだ

泳ぎの上手なあなたは

あたりまえのように知っていた

水に浸され 漂うことの

こころよさも 怖さも

泳ぎの苦手なわたしは

ふれがたく 眺めていただけ

透きとおった水面に

揺れる光や雲の影のように 放たれることを

眠りのなかで

とおく夢見た

 

 

 

| 既刊詩集『水車のめぐる家で』 | 13:04 | - | trackbacks(0)