ニライカナイ 〜川井豊子の詩の記憶の森

ニライカナイ 〜川井豊子の詩の記憶の森
【組詩 様々な夜】より 〈透きとおる耳〉

キッチンで 道端で そしてベッドで

音もなく斃れてゆく

見知らぬ もしくは見知ったヒトの群れ

そんなふうに

今日もダレカの眠りの奥で

置き換えられ すり替えられ 葬り去られてゆく

いく人もの〈あなた〉という存在

けれどそれは

本当にあなたなのだろうか

(いかなる数値にも

 空白にも置き換えられることなく

 

誰のものでもなく

増幅し ひしめく

〈騒めき〉のただなか

いくつもの夜を渡って

透きとおる時が 耳を澄ましている

確かすぎる鼓動の奥に息づく

何かを聴きとろうとして

もはや

闇と見分けがたいまでに

透きとおってゆく

ワタシの

アナタの

カレの

カノジョの

いくつもの耳

 

 

 

| 既刊詩集『朔太郎の耳』 | 15:40 | - | trackbacks(0)