ニライカナイ 〜川井豊子の詩の記憶の森

ニライカナイ 〜川井豊子の詩の記憶の森
いくつもの夜

いくつもの夜

あなたとわたしは愛し合った

肌に深く 闇をまとって

新しい名を打ち明け合った

遠い潮のうねりのように

銀の背をひるがえしながらめぐっていった

いくつもの いくつもの夜

それは 束の間とさえ思えた

ふるえる ふたつの心と体を

通り抜けて

いくつもの夜

そして一つしかない夜

あなたとわたしは愛し合った

わたしは願った ひとつのことを

あなたも願った ひとつのことを

言葉の白い刃のかたわらで

体は語り出そうとした

熱く強く そして間近く

 

わたしたちの夜をめぐっていった

いくつもの夜

それはかつて消えていった

数限りないひとびとの夜

いつの日か

一点のコバルトブルーに消えてゆく時

それはどんな光を放っているのだろうか 

 

 

 

 

 

 

 

| 既刊詩集『朔太郎の耳』 | 16:13 | - | trackbacks(0)