ニライカナイ 〜川井豊子の詩の記憶の森

ニライカナイ 〜川井豊子の詩の記憶の森
『夜の地球』

それは一枚の不思議な写真だった

宇宙から撮った『夜の地球』

夜というのに

けれどそこには 光が溢れている

そしてなかでも

ひと際くっきりと 地図さながら象られて

夜の底にその姿を浮かび上がらせていた

細く 弓なりに連なる島々

こんなふうに

町に眠るあけすけなほどのこの夜に

真っ暗な闇というものは

無くなってしまったのだろう

そして星も いくつと数えられるまでに

数を乏しくしていったのだろう

その一枚の写真はまた

音の洪水おように瞬く

数億の光に充たされて

とても 美しかった

けれど それら光の大陸 光の島々のなかで

明るく象られていない地帯

未だ本当の闇に包まれている夜が

そこにまだ残ってあることが

そのときの私を

何故かしら ほっとさせ

黒の底で

今もうごめき 息づいているだろう何かに

眼を凝らさせた

 

 

         ※『夜の地球』

          リモートセンシングによる夜の地球のモザイク画像

                 (美星天文台にて)

 

 

 

 

 

| 既刊詩集『朔太郎の耳』 | 10:37 | - | trackbacks(0)