ニライカナイ 〜川井豊子の詩の記憶の森

ニライカナイ 〜川井豊子の詩の記憶の森
むらさきの時
空の芯はいまだグレーがかった青であり
西の方から
夕暮れ時は赤く熟れてゆきます
その時は いつなのでしょうか
ちょろちょろとせせらぐ
川面が仄かにむらさきに染まってゆく
染まることをゆるされる
それはいったい いつなのでしょうか
歩いてゆく女の髪を
夕風がそよと吹き過ぎます
こころの中にも
それはそよと吹き過ぎます
そのなかで
青でもなく赤でもない
青でもあり赤でもある
あのむらさきの川面が
鮮やかに燃え立って
一瞬 女は
おのが想念の熱さに
ひやりとします
あれからどれだけの時が経ったのか
これからどれだけの時を過ごすのか
空の芯は
ますますグレーを帯びてゆき
夕暮れ時も熟れ果てて
道には夜が 押し迫っています

 

| 既刊詩集『眠る理由』 | 11:40 | - | -