ニライカナイ 〜川井豊子の詩の記憶の森

ニライカナイ 〜川井豊子の詩の記憶の森
ワタクシはそこで/もう一人のワタクシに出会ったようなのであるが

迷路

というよりは

うずもれたピラミッドの

内側にいるという感触

半覚 半睡

たぶんそういった状況

(めざめよ めざめよ)

けれどすっぽりとつつまれてあることの

心地よさ

暗闇でも光りでも そのどちらでもない

開かれたその胎内をめぐり階段を昇りまた降り

むき出しの空

は裏返しの脳幹

切り取られた空に

そそぐ光と雨粒と

うつろう風 雲

ふくらんでゆく発せられない言葉

のような静けさ

かすかなヒトたちの身じろぎは

鼓動となってこだまする

灰色の壁伝いに歩みを進めてゆくこと

は何かを手元にたぐり寄せること

あのときあてもなく通路の薄明かりの中をめぐっていたのは

もう一人のワタクシ

ではなかったのか あるいは

土に眠るマイマイつむりの薄い殻の中を過ぎていったワタクシ

やこれから過ぎてゆくワタクシが

幾重にもうごめきだぶり ふと

〈時間〉というものの正体をかいまみてしまったような

気がして

〈今 そこにあることの ふしぎ〉

あるかなきかの風が

吹き抜けていって

 

                     (2004年夏、直島地中美術館にて)

 

                   

 

 

 

| 既刊詩集『スクラップ―に捧ぐ』 | 10:10 | - | -