ニライカナイ 〜川井豊子の詩の記憶の森

ニライカナイ 〜川井豊子の詩の記憶の森
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『アンコールワットな日々』 【19】夕焼けとスコールのあとで

 夕食のレストランへと急ぐバンの中で、ぽつぽつと振っていた雨はやにわにスコールとなった。空から滝が流れ落ちているようだ。バンパーが忙しなく動く。ときおり、激しい雷鳴。闇に包まれてゆく林や町の向こうに、鮮やかな夕暮れの空が広がっていた。

 夜になった町に戻り、車のドアからレストランに駆け込む。エントランスの向こうは、奥内というよりも大きなホールに屋根がついているという感じで、風が四方に抜けて開放的だ。天井も高く、数百人は入れそうだが、今夜はテーブルの半分くらいの客数のようだ。ビュッフェスタイルでクメール料理が用意され、ホール前方にはまだ幕がおりているがステージがあり、最前列の端寄りに座る。

 料理のメニューは、サラダから魚や肉料理、麺料理、デザートと品数も豊富だ。果物といえば、実は旅行前からマンゴーを期待していたのだが、ちょうどシーズンが終わってしまったといことでちょっと残念だった。魚はトレンサップ湖で獲れた淡水魚で、甘酸っぱい味付けで食べやすかった。生臭さを取るために念入りに塩洗いをするそうだ。もちろんスパイスは日本食よりは効いているが、辛すぎて食べづらいということはない。トマトやココナッツや香草も用いられているが、カンボジア料理でよく使われるのは「トック・トレイ(魚醤)」や「ブラホック」だということで、匂いに敏感な人ならちょっと閉口したかもしれないが、まあ私は大丈夫だった。

 それよりも、青胡椒の粒が挽かれることなく煮込まれたりして入っているのには驚かされた。カンボジアは古くから胡椒の産地であり、ふんだんに使われているその香りは強く、もちろんスパイシーなのだが、プチプチと口の中で弾ける胡椒の粒の食感は癖になりそうだった。私が日本で普段口にしているのは黒や白の胡椒だが、どれも同じ胡椒で、収穫の時期によって用途が違い、熟す前の実である青胡椒は、野菜のように使われることが多いようだ。

 

                         (【21】に続く)

 

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